生命保険の貯蓄型と掛け捨てを比較。資産形成におすすめなのはどっち?

一口に生命保険といっても、貯蓄型か掛け捨てにするかで、毎月支払う保険料など細かい部分はだいぶ違ってきます。両者の違いを熟知し、自分や家族のライフスタイルにあった生命保険を選ぶようにしましょう。また、資産形成との関連からも、貯蓄型と掛け捨てのどちらを選ぶのがおすすめかについても、具体的な事例を交えながら解説します。

貯蓄型の生命保険のメリット・デメリット

貯蓄型の生命保険とは、万が一のことがあったときに死亡保険金を受け取れるのみでなく、解約時・満期時にも解約返戻金や満期保険金としてまとまったお金を受け取れる生命保険のことです。

貯蓄型の生命保険のメリット

貯蓄型の生命保険のメリットとして「万が一のことに備えられるうえに、貯蓄もできる」ことが挙げられるでしょう。保険期間満了時や解約時までは、万が一のことに備えるための生命保険として活用できます。一方、保険期間満了・解約後は満期保険金や解約返戻金としてまとまったお金が手に入るので、状況に応じて使って構いません。また「貯蓄が苦手な人にも向いている」のもメリットです。貯蓄型の生命保険は、毎月決まった保険料を支払い続ければよく、特に難しい手続きは必要ありません。会社経由で団体扱保険に加入すれば、給料から保険料が天引きされるのでさらに簡単でしょう。

そのうえ、保険料は貯金ではない以上、自由に引き出して使えないのです。このため、計画立てて毎月貯金するのが苦手な人や、お金は入ってきた分だけ使うという浪費傾向のある人でも、無理なく貯められます。加えて「いざというときに契約者貸付も利用できる」というメリットもあります。契約者貸付とは、保険会社から解約返戻金のうち一定の範囲内でお金を借りられる制度のことです。具体的な貸付の上限金額は、保険会社や契約内容次第の部分もありますが、解約返戻金の70%~90%程度が相場でしょう。キャッシングやカードローンより金利も低く、審査もいりません。ただし、貯蓄型の生命保険であっても、契約者貸付を利用できない場合もあります。このあたりは、保険会社に確認しましょう。

貯蓄型の生命保険のデメリット

一方、貯蓄型の生命保険のデメリットとして「掛け捨て型の保険よりも総じて保険料が高め」なことが挙げられます。あまりに高すぎる保険料では、支払い続けるのが困難になり、死亡保険金や解約返戻金、満期保険金を受け取る前に解約してしまう可能性も出てくるでしょう。そして、短期に解約してしまうと、解約時点までに払い込んだ保険料の総額より、解約返戻金として受け取れる金額のほうが少なくなってしまうので注意が必要です。貯蓄型の生命保険は「毎月の保険料がいくらまでなら無理がないか」を考えてから、加入しましょう。また、何らかの事情により保険料を払えそうにない場合は、すぐに解約するのではなく、保障額を見直して保険料を減額するのも1つの方法です。

掛け捨て型の生命保険のメリット・デメリット

掛け捨て型の生命保険とは、万が一のことがあったときに死亡保険金を受け取れるものの、解約時・満期時の解約返戻金、満期保険金は設定されていない生命保険のことです。

掛け捨て型の生命保険のメリット

掛け捨て型の生命保険のメリットとして、貯蓄型の生命保険に比べると保険料がかなり安いことが挙げられます。貯蓄型の生命保険では契約者から預かった保険料を運用して、将来死亡保険金・満期保険金・解約返戻金として返却するため、あらかじめそのような事情を勘案した保険料が設定されています。しかし、掛け捨て型の生命保険では保険料を解約返戻金・満期保険金として返却することはありません。そのため、貯蓄型の生命保険と比較すると毎月の保険料が安いのです。また「万が一のことがあったら死亡保険金が受け取れる」というきわめてわかりやすい構造なのも、メリットの1つでしょう。

掛け捨て型の生命保険のデメリット

一方、デメリットとして「保険期間内に何も起こらなかった場合、死亡保険金は受け取れない」ことが挙げられます。そのため「今まで払ってきた保険料が無駄になった」と感じる人もいるかもしれません。「万が一に備えるためにお金を払っている」と割り切れるかどうかが重要になるでしょう。なお、解約返戻金がない以上、契約者貸付制度も利用できません。人によってはこれもデメリットに感じるでしょう。

年末調整、確定申告での生命保険料控除の恩恵が大きいのは貯蓄型

貯蓄型、掛け捨て型を問わず、生命保険を契約しているなら、毎年の年末調整・確定申告で生命保険料控除を受けることができます。

生命保険料控除とは

生命保険料控除とは、払い込んだ生命保険料に応じた一定額を、契約者(保険料を支払った人)のその年の所得から差し引くことができる制度です。つまり、税金(所得税)を計算する際の基礎となる金額が安くなるため、節税になるのです。

1年間に支払った保険料が多いほうが控除額も大きくなる

生命保険料控除額は、1年間に支払った生命保険料に応じて決まります。1年間に支払った保険料が80,001円以上の場合は、一律40,000円を生命保険料控除として所得から差し引くことが可能です。生命保険料の具体的な金額は年齢、死亡保険金の額によっても異なるため一概にはいえませんが、貯蓄型の生命保険のほうが、掛け捨て型の生命保険より1年間に支払う保険料は高くなるはずです。そのため、年間の支払額が80,001円以上になる可能性も高いため「より、生命保険料控除で受けられる恩恵は大きい」といえるでしょう。

貯蓄型の生命保険よりも掛け捨て型の生命保険とつみたてNISAの併用が効果的

資産形成を重視するなら、貯蓄型の生命保険だけに頼るのではなく、比較的リスクの低い投資も取り入れていきましょう。掛け捨て型の生命保険とつみたてNISAを併用するのも1つの手段です。ここで「毎月の保険料が約3万5,000円の貯蓄型生命保険を使う(ケース1)」場合と「万が一のことには掛け捨て型の生命保険で備えつつ、約3万円をつみたてNISAで運用する(ケース2)」場合を比較し、支払った保険料や拠出額に対し、どれだけのリターンが見込めるかをシミュレーションしてみます。なお、両者に共通する条件は以下の通りです。

  • 被保険者は40歳男性
  • 掛け捨て型生命保険・貯蓄型生命保険における死亡保険金の額は1,000万円とする
  • 保険期間、保険料払込期間およびつみたてNISAの運用期間は20年とする
  • ケース1においては、保険料払込期間が終了した直後に解約し、解約返戻金を受け取るものとする
  • シミュレーションにおいて使用する保険商品は、オリックス生命株式会社の「終身保険ライズ」「定期保険ファインセーブ」とする
  • つみたてNISAでは「バンガード・S&P500 ETF(VOO)」に投資。年率3.0%で運用すると仮定

ケース1の場合

先に列挙した条件で「終身保険ライズ」に加入する場合、毎月の保険料は34,510円になります(2022年2月22日調)。仮に、20年間毎月保険料を支払い続けた場合、払込保険料の額は828万2,400円です。そして、保険料払込期間が終了した直後(低解約払戻期間経過直後)に解約した場合の解約返戻金は、860万3,700円になります。解約返戻率は103.8%です。つまり、支払った生命保険料の総額に対し、20年間で3.8%増やせたと考えましょう。

ケース2の場合

一方、先に列挙した条件で「定期保険ファインセーブ」に加入しつつ、つみたてNISAを通じて「バンガード・S&P500 ETF(VOO)」で運用したケースを考えてみましょう。20年間で支払う生命保険料の総額は84万円です。そして、毎月3万円を20年間つみたてNISAを通じて「バンガード・S&P500 ETF(VOO)」で運用した場合、最終積立金額は984万円9,060円になります。内訳は、元金が720万円、運用収益が264万9,060円です。20年間で支払った生命保険料の総額を差し引いても、約180万円(264万9,060円-84万円=180万9,060円)のプラスになります。つまり、つみたてNISA口座に拠出した金額の総額に対し、20年間で25%増やせたと考えましょう。

効率よく増やせるのがメリットではあるものの

ケース1とケース2を比較してもわかるように、低金利の水準が続くようなら、貯蓄型の生命保険よりも、掛け捨て型の生命保険とつみたてNISAでの運用を併用するほうが、資産形成が効率よく行えるのがメリットです。ただし、注意したい点もあります。つみたてNISAは少額からの「長期・積立・分散投資」を支援する制度であるため、株やFX(外国為替証拠金取引)に比べると、リスクは低いです。しかし、投資である以上「絶対に損をしない」ことはあり得ません。自分がどこまでリスクを許容できるのか、そして、つみたてNISAでどんな商品を選び運用するのかも踏まえ、自分にとって良い方法を選びましょう。

大切なのは、自分に合った方法を選ぶこと

貯蓄型の生命保険は、万が一のことに備えつつも、貯蓄ができる商品として古くから用いられてきました。仕組みが簡単であるうえに、貯金が苦手な人でも貯めやすいのは大きなメリットです。しかし、すべての貯蓄型の生命保険の解約返戻率・満期返戻率が高いとは限りません。掛け捨て型の生命保険とつみたてNISAを併用する方が、万が一に備えつつ、効率的に資産形成ができることだってあり得ます。どちらが良いのかは、その人の性格や考え方によっても異なりますが「さまざまな方法を比較検討し、自分に合ったものを選ぶ」のを心がけましょう。